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Ch5.彼女が何かを望み始めたとき

夜の闇が王宮の輪郭を濃い墨のような影へ押し潰し、その上には星がまばらに浮かんでいた。まるで誰かが適当に何掴みか撒き散らし、並べ直すのも面倒になったかのように。


ジェフリーが城で迎える最初の夜、彼は城東にある目立たない小さな宿へ泊まった。


最安の宿でもなければ、最も高い宿でもない。部屋を選ぶとき、彼には自分なりの習慣があった。裏庭に面していること。窓があること。

そして、その窓から二本以上の路地を見渡せること。七年間歩き続けるうちに身についた直感だった。皮膚のように身体へ馴染み、考える必要などない。ただ、そうすればいい。彼は剣を寝台の脇へ立てかけ、外套を椅子の背へ掛けた。


それから窓辺へ腰を下ろし、あの隠し袋を取り出して膝の上へ置いた。


長いあいだ、見つめていた。

短刀は彼女のもの。小石は、自分が拾ったもの。どちらも軽い。


それなのに、胸のどこかへ重くのしかかっていた。眠ろうという気さえ起きないほどに。彼は親指の側面で、短刀の柄の擦り減った部分をそっと撫でた。


その感触は一つの問いのようだった。

答えはない。けれど、消えるつもりもない。


三か月。彼はその数字を、もう一度頭の中で広げてみた。彼女はこの三か月で、何をするつもりなのだろう。

分からない。もしかすると、彼女自身にも分かっていないのかもしれない。

それでも彼女は、その時間を求めた。


その事実だけで、すでに何かを示していた。


何も望んでいない人間なら、わざわざ時間を勝ち取ろうとはしない。


時間というものは、まだやるべきことが残っている人間のためにある。彼の口元が、ごく僅かに弧を描いた。


けれど、すぐに元へ戻った。窓の外では、夜回りの男が提灯を提げて通り過ぎた。銅鑼が二度鳴り、その音は夜の中へ沈んでいった。ジェフリーは隠し袋を再び胸元へしまい、立ち上がって机へ向かった。


短くなった蝋燭へ火を灯す。

黄ばんだ灯りの中で、今日聞き集めたことを頭の中でもう一度整理した。

王宮の側門。

買い出しに出る雑役たちの出入りする時間。衛兵の交代が何刻ごとなのか。


廃塔が王宮のどの方角にあるのか。城壁の外から見たとき、およそどれほどの高さがあるのか。彼は流浪の騎士だ。密偵でもなければ、暗殺者でもない。けれど七年ものあいだ流浪してきた彼が身につけたものは、剣術だけではなかった。一つの町をどう読むか。見知らぬ土地で、最短で地形を把握するにはどうすればいいか。


一つの場所で砂粒のように身を置き、そこにいながら、見ながら、それでも誰の記憶にも残らない方法。


それらを彼は知っていた。


ジーロングが彼女へ向けていた、あの目。それが再び頭の中へ浮かんだ。彼は蝋燭の火を吹き消した。闇が再び部屋へ落ちる。彼は椅子の背へ身体を預け、暗闇の中で目を開けたまま、見えない天井を眺めた。


呼吸は安定している。

鼓動も安定している。ただ一つ。

胸の奥に燻り続ける、置き場所のない炭火だけが、消えずに残っていた。


彼女はまだ、自分が何を欲しいのか分かっていない。それでいい。彼には時間がある。


彼女が自分で分かるまで、待てばいい。


そして、彼女が答えを見つけるまでのあいだ、自分がするべきことは一つだけだった。暗闇の中で、彼の目が僅かに細くなる。



身を伏せた獣のように。静かで。けれど完全に目を覚ましている。ただ、ここにいればいい。________________________________

数日が過ぎると、アンナの生活は元へ戻った。礼儀に満ちていて、そして退屈な日々。


けれど今は、少しだけ息をつける時間がある。


彼女は寝台の柱へ、新しいペーパーナイフでまた一本、傷を刻んだ。日数を数えているようだった。あと八十五日。刀の柄を強く握る。けれど、そこで一度手が止まった。


そうだ。これは新しいものだった。何度も手に取り、自分の命を終わらせようとしながら、最後には静かに置き直していた、あの一本ではない。「忘れてた……あの人に、あの短刀を渡したんだった……」馴染みのないペーパーナイフを置き、ジェフリーのことを思い出した。まだ二度しか会っていない。


ほとんど話してもいない。それなのに、どこか互いを理解しているように感じた人。


けれど、彼が自分へ名前を名乗ったのかどうかさえ、思い出せなかった。彼女はため息をついた。「まあいいわ……どうせ、もう会うこともないでしょうし……」気持ちを整えると、アディーを呼んだ。「アディー、城の外へ出て、前にあなたが買ってきてくれたお菓子を買ってきてくれない?」


「ほら……あなたがたまに長い休みで故郷へ帰ったあと、持ってきてくれた、あれ」



久しぶりに、彼女の瞳へ少し光が戻った。「王宮から、そんなに遠くないって言ってたわよね?」________________________________城東の朝には、どこか気怠い生活の匂いがあった。


豆腐屋から上がる白い湯気と、その隣で焼かれる餅の香ばしい匂いが、細い路地の両側から中央へ流れ込んでいる。通り全体が、人を眠たくさせるような温もりに浸されていた。ジェフリーは宿の外にある長椅子へ座っていた。目の前には、まだ一口も手をつけていない熱い汁物。手には短い木片を持ち、携帯している小刀でゆっくりと削っている。


何か役に立つものを作っているわけではない。ただ、手にやることを与えているだけ。傍から見れば、暇を持て余している男。わざわざ二度見る価値もない。そう思わせるために。この町へ来てから、すでに数日が経っていた。その数日のあいだに、彼は城東から城西までの路地を、ほとんど把握していた。どの道が王宮の買い出し用の裏門へ続くのか。


どの露店の主人が話好きで、耳が早いのか。

何刻になれば、城門の交代前の衛兵が門洞の中で居眠りを始めるのか。


すべて覚えた。紙には一文字も残していない。全部、頭の中に入っている。この数日、彼はアンナについて新たに聞き回ってはいなかった。知りたくなかったわけではない。頻繁に聞けば、目立つからだ。


ただ毎日、王宮の側門から近すぎず遠すぎないこの通りへ座り、人の行き来を眺めていた。埃を被った石のように。


誰も彼がそこにいたことなど覚えない。けれど彼は、側門を出入りするすべての顔を、はっきりと覚えていた。木片の先端を丸く削り終えた、そのときだった。側門が開いた。出てきたのは、二十代前半ほどの若い女だった。


王宮の侍女によくある髪型。手には空の籠。足取りは軽い。


買い出し係の雑役たちのような重苦しい顔はしていなかった。むしろ、久しぶりに外へ出られたことを楽しんでいるような、僅かな解放感があった。ジェフリーの手が一度止まる。それから、何事もなかったように削り続けた。すぐに立ち上がったりはしない。ただ伏せた瞼の下から、その女がどちらへ向かうのかを確認した。


市場ではない。城東の菓子屋のほうへ向かっている。この数日歩いた道筋を頭の中で思い返す。その店へ行く道は一つしかない。途中には必ず通る細い路地がある。両側は高い壁。


人通りも少ない。彼は半分削った木片を置いた。指の節を軽く鳴らし、立ち上がる。汁椀を脇へ押しやる。動きは急がない。ただ散歩へ出る男のようだった。彼はその細い路地の入口で壁へ背を預け、待った。


空の籠を持った侍女が角を曲がり、中へ入ってきてから、壁際で静かに声をかけた。


大きくはない。一人に届けば十分な声。「そこのお嬢さん」侍女は驚いて半歩下がり、警戒した目で彼を見た。ジェフリーは近づかなかった。その場に立ったまま。


両手は身体の横へ下ろしている。姿勢は開いていて、威圧する気配は何もない。

見知らぬ相手に、自分が危険かどうかを自分で判断させることへ慣れている男のようだった。彼は彼女の顔を見ながら、この数日観察してきた印象を頭の中で静かにふるい分けた。


王宮の侍女にも、いくつか種類がある。いつも怯えている者。要領がよく、世渡りに慣れている者。そしてもう一つ。


長く信頼できる主人へ仕えているうちに、その主人の気質を少しだけ身につけた者。


この女は籠を持ち、側門から出てきた。雑役用の門ではない。つまり、ある程度の立場がある。歩調も軽い。


この外出を嫌がってはいない。使いではある。だが、苦役ではない。彼の口元に、ごく淡い弧が浮かんだ。袖口へ隠していた銀貨を指の間へ挟み、陽光の中で一度裏返す。「数日前、この辺りを通ったとき、城門の外で……」彼は一度言葉を止めた。言い方を考えているように見せながら、実際には彼女の表情を見ている。


「ある女性に会った。親切に、町で泊まれる場所を教えてもらったんだが、そのとき礼を言い忘れてしまってな。どうにも気になっている」


「覚えているのは、その人がどうやら王宮と何か関わりがあるらしい、ということだけだ」一言一言、すべて嘘だった。けれど彼の嘘は静かだった。本当に、ただ礼を言いそびれた旅人のように。


琥珀色の瞳が、一秒だけ侍女の顔へ留まる。穏やか。


それでも、見えないほど細い針が一本、相手が口を開くのを静かに待っているようだった。アディーは警戒したまま、空の籠を胸の前へ持ち上げた。半歩下がり、話しかけてきた男の顔をよく見る。


彼だった。あのとき、長い廊下で自分と慌てた視線を交わした男。


塔の頂へ上がり、自分の主人が愚かなことをするのを止めた男。

アディーは驚いて声を上げた。


「あなた! あの日の方……!」ジェフリーは固まった。ほんの一瞬だけ。本当に僅かな時間だった。けれど確かに、驚いた。琥珀色の瞳が、その侍女の顔を素早くなぞる。記憶が頭の中で頁をめくる。あの日の朝。廃塔の廊下。


衛兵たちが来る前の混乱。


一人の侍女がいた。彼と目を合わせた。怯えていた。けれど、声を上げなかった。この女だ。彼はその驚きをすぐに押し込み、表情を元の静けさへ戻した。


けれど瞳の奥の光だけが、僅かに温度を変えた。窓の隙間から差し込む光のように。細い。けれど、明るい。同時に、袖口へ隠していた嘘も引っ込めた。銀貨を何気なく指の間へ戻し、別の話し方へ変える。


先ほどより少し低い声。より直接的だった。「俺だ」なぜここにいるのかは説明しなかった。先ほどの作り話も続けない。自分を知っている相手へ嘘を続けるのは無駄であり、危険でもある。

彼の眼差しは侍女の顔へ留まった。静か。脅す気配はない。けれど目を逸らすこともしない。自分には隠すことなどない。だから、そちらも慌てて逃げる必要はない。


そう伝えているようだった。彼は壁際へ半歩寄り、彼女が来た道を空けた。姿勢をさらに低く、力の抜けたものへ変える。道を塞がない木のように。


「悪意はない」そう言って、一度止まった。次の言葉を舌の上で転がしてから、ゆっくりと口にする。「彼女は……」その言葉が出た瞬間。声の中の何かが、僅かに変わった。誰かが不意に一本の弦へ触れたように。細かく。けれど偽りではない。「元気にしているか?」それだけだった。それ以上は尋ねなかった。


背中の傷はどうなったのか。宴はどうなったのか。ジーロングはどうしたのか。あの書斎で、結局何が起きたのか。何も聞かなかった。聞きたいことすべてを、その一言の下へ押し込めた。表へ出したのは、それだけ。彼の右手は身体の横へ垂れていた。親指が、人差し指の節をそっと一度擦る。


答えを待つあいだ、完全には静まれない気配。深く隠していたそれが、ほんの少しだけ漏れた。ジェフリーがアンナを気にかけているのを聞き、アディーは警戒を解いた。


この男なら、警戒しなくてもいい。ほとんど何も知らない相手であっても。あのとき、理由も分からないまま塔の頂へ駆け上がり、アンナを探していた彼の慌て方。それだけで十分だった。「今日は、だいぶ気分がよくなられています」


アディーは痛ましそうに言った。「ここ数日、ほとんど何もお話しにならなかったんです」けれど、そのあと瞳へ僅かな光が差した。「でも今日は、珍しく私に、お菓子を買ってきてほしいとおっしゃって」「本当に、ずいぶんよくなられました。少なくとも、少し笑ってくださるようになって」


ジェフリーは、それを聞いてもすぐには話さなかった。

ただそこへ立ち、その言葉が胸の中へ落ち着くのを待った。


ここ数日、ほとんど話していなかった。その一言を、心の中でもう一度なぞった。一度。それから、それを押し込める。他人には見せるつもりのない場所へ。顔には、大きな変化はなかった。けれど目尻の線が、僅かに強くなった。紙の端を誰かにつままれたように。少し縮まり。また、そっと戻った。何日も。彼女は一人で。あの石造りの王宮の中で。


何日も、何も言わずにいた。

彼は顔を伏せ、指の間の銀貨を見つめた。


二秒ほど黙る。それから銀貨をしまい、別の一枚を取り出した。けれど、渡しはしなかった。ただ指の間へ挟んだまま。何かを決めようとしているように。「菓子」彼は、その言葉を一度繰り返した。声は平らだった。


けれど口元には、ごく淡い弧が浮かんでいるようにも見えた。「彼女が、お前に菓子を買ってきてほしいと言ったのか」顔を上げ、アディーを見る。琥珀色の瞳には、重い何かがあった。


けれど同時に、「少し笑ってくださるようになった」という言葉の上へ、軽く、温かく落ちるものがあった。長いあいだ暗闇を歩いてきた人が、遠くに小さな火を見つけたように。まだそこへ辿り着いてさえいないのに、先に一度息を吐けたように。彼は銀貨を指の間で一度回した。そして、直接尋ねた。


「どの店へ買いに行く?」アディーが答えるより先に、続ける。先ほどよりも、どこかさらに直接的なものを含んだ口調だった。

「俺も一緒に行く」そう言った彼の横顔へ、路地の入口から光が差していた。濃い褐色の短い髪が、朝風で何本か崩れている。


左の額にある小さな傷痕が、光の中で見え隠れした。アディーがどんな顔をしているのか、彼は見なかった。ただ半歩前へ進み、進む方向を彼女へ譲った。お前が先に歩け。俺はついていく。


そういう意味だった。彼女が菓子を食べたいと言った。誰かを外へ買いに行かせた。それは、ようやく何かを食べたいと思ったということだ。


今日、彼女の中に「欲しいもの」が一つ生まれたということだ。数日前、塔の縁へ立っていた人が。今日は、菓子を食べたいと思っている。その事実自体が、どんな言葉よりも大切だった。彼は彼女を驚かせるつもりはなかった。ただ思っただけだ。


その菓子が、少しでも美味しければいい。もっと美味しければ、なおいい。彼女がほんの少しでも多く笑えるなら。

それだけで、十分価値がある。

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Ioanna And Jeffery

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