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Ch6.確かとは言えない答え

ジェフリーが一緒に行きたいと言っても、アディーは特に不自然だとは思わなかった。


彼女は頷き、そのまま歩き出した。「城東の市場のそばにある路地へ行くんです。そこに、おばあさんが一人で作っているお菓子屋さんがあって。知っている人はほとんどいないんですけど、素朴で、とても美味しいんですよ」そう言って笑うと、幼い頃からずっと仕えてきたAnnaのことを思い出した。


「宮殿で育ったお嬢様なら、こんな素朴なものは嫌がると思っていたんです。でも一度、私がこっそりお菓子を食べているところを見つかってしまって……『私も食べてみたい』って、ずいぶん騒がれて」アディーはまた笑った。Annaのことを話すその様子は、まるで母親が自分の娘の話をしているようだった。


「それからなんです。私が長い休暇をもらって実家へ帰るたびに、お嬢様は『戻ってくるとき、あのお菓子を忘れないでね』って言うようになって」


ジェフリーはアディーの半歩後ろを歩いていた。

彼女の歩幅に合わせて少し速度を落とし、細い路地を縫う光と影の中を進んでいく。


口は挟まなかった。ただ聞いていた。目は前の道へ向けたまま、それでも彼女の言葉は一つ残らず胸の内へ収めていく。アディーがこっそり菓子を食べているのを見つけて、自分も食べたいとせがむ。その光景を、ジェフリーは頭の中で一度描いてみた。宮殿で育った少女がどこかの片隅にしゃがみ込み、侍女の手の中にある菓子を、きらきらした目で見つめている。


塔の上で見た彼女と同じ人間のはずなのに、ひどく遠い場所にいる別人のようでもあった。


彼の喉が、わずかに動いた。声は出ない。話が進むにつれて、アディーの笑い声には、よほど親しい者でなければ滲ませることのできない、柔らかく確かな愛情が混じっていった。ジェフリーは一度だけ彼女を横目に見た。何も言わなかった。


ただ心の中で、「アディー」という名前を、それまで置いていた漠然とした『宮殿の侍女』という場所から、もっとはっきりした場所へ移した。


彼女は、ただの侍女ではない。Annaと共に育ってきた人だ。数歩進むと、路地の角の向こうから市場のざわめきが聞こえ始めた。

揚げ物の香ばしい匂いと、人々の話し声。人が暮らしている場所にしかない、どこかほっとする騒がしさ。「彼女は、小さい頃から……」ジェフリーの声は低かった。尋ねているようでもあり、自分自身へ確かめているようでもある。


「ずっと、ああやって……」一度止まり、いくつかの言葉の中から、いちばん近いものを選ぶ。「自分の感情を抑え込んでいたのか?」責める声ではない。憐れむ声でもない。ただの確認だった。組み上げている絵の一片が、本当にその場所で合っているのか確かめるような。彼の視線は前方の路地口へ向いたまま。口調も天気の話をするほど平静だった。


けれど、外套の布を指の関節がほんの少し擦った。アディーから聞く話が、決して軽いものではないことだけは、その小さな動きが語っていた。

アディーはAnnaのために、形のきれいな菓子を何個か選びながらも、ジェフリーの質問を聞き逃してはいなかった。それは、長年侍女として生きてきた彼女が自然と身につけたことでもあった。


「話しますよ。でも、話し始めると泣き止めなくなってしまうんです。誰かが抱いて、ずっと宥めてあげないと……ただ……」


アディーはそこで言葉を切った。続きを話していいのかどうか、迷っているようだった。ジェフリーは屋台の脇に立ったまま、菓子には目もくれず、静かに待った。彼の待ち方には、何の圧力もなかった。問い詰めない。


横を向いて促しもしない。

目で答えを求めることもしない。ただ、その「ただ」の先に残された空白を、そのまま開けておく。開いた扉のように。


入るかどうかは、アディーが決めればいい。


ジェフリーは、人生の中で多くのものを待ってきた。夢の中の人間が顔を見せるのを。道中の天気が変わるのを。一つの街の城門が、朝になって再び開くのを。


待つことには、慣れている。市場の方から風が吹いてきた。焼き上がったばかりの菓子の甘い香りに、人々の声と、遠くの呼び込みが混ざっている。ジェフリーの目が、アディーの選んでいる菓子へ一瞬だけ落ちた。形は素朴で、色合いも華やかではない。けれど、作っている老婆の手つきを見れば、何十年も続けてきたことが分かった。


知る人は少ない。でも、とても美味しい。Annaがアディーのつまみ食いを見つけたときの姿を、また思い浮かべる。自分では一度も見たことがないのに、なぜか妙にはっきり描ける。ジェフリーは懐から銅貨を数枚取り出し、屋台の板の上へそっと置いた。菓子の代金より、少し多い。


何も言わない。説明もしない。それからアディーへ視線を戻し、二人にしか届かないほど低い声で聞いた。「ただ……何だ?」

彼女が止まったことを、聞かなかったふりはしない。


けれど、その問い方は、話してもいいし、話さなくてもいいと伝えるようなものだった。琥珀色の瞳の奥では、炭火のような何かが深く、静かに燻り続けていた。アディーは少し迷い、それから小さく息を吐いた。この人になら話してもいい。


そう思ったのかもしれない。ロシニトロに、父親から愛されていない美しい王女がいる。それ自体は、今さら珍しい噂でもなかった。「お嬢様は、大きくなるにつれて、どんどん我慢するのが上手になりました」アディーは静かに言った。「たぶん……昔、ある晩に悪い夢を見たことがあったんです。泣きながらお父上の部屋へ行ったのに、陛下は扉を開けてくださらなかった」声が少しだけ沈む。


「お嬢様は、扉の外で何時間も泣いて……最後には泣き疲れて、そのまま眠ってしまいました。部屋まで運んでくださったのは、侍衛長でした」

そこまで話してから、アディーはようやく、ジェフリーが屋台へ銅貨を置いていたことに気づいた。


すぐに手を伸ばす。「だめですよ、こんな。お金は受け取れません。持って帰ってください!」ジェフリーは、その話を聞き終えても動かなかった。


呼吸さえ、一瞬止まったようだった。

目の前に一つの光景が浮かぶ。


自分が見たわけではない。アディーの言葉が、勝手に形を作った。

閉ざされた扉。その前にいる、小さな女の子。大きかった泣き声が、少しずつ小さくなっていく。

やがて、声も出なくなる。最後には力尽き、冷たい回廊の石床の上で眠ってしまう。扉は開かなかった。


侍衛長だけが、彼女を抱き上げて部屋へ戻した。ジェフリーの顎が、ゆっくりと強張った。小さな変化。でも、力は強い。塔の上で見たAnnaの横顔を思い出した。疲労より深く。恐怖より古い。あの表情。


あのときは、政略結婚への絶望だと思っていた。ジーロングへの恐怖。


追い詰められた人間が、崖の縁で見せる疲れ。でも。今なら分かる。あの表情は、もっと重い。小さい頃から、扉を叩かないことを覚えてきた人の顔。あまりにも長くそうしてきたせいで、泣きたくなったとき、どこへ行けばいいのかさえ分からなくなった人の顔。胸のどこかを。


鈍く。強く。掴まれた。その手は、なかなか離れなかった。アディーが銅貨のことに気づいて押し返そうとしたことで、ジェフリーはようやく、その深い場所から意識を戻した。


木板の上の銅貨を見る。それから、アディーが伸ばした手を、そっと横へ逸らす。押さえつけるのではない。


ただ、銅貨へ届く道を塞ぐだけ。「そのままでいい」声は、さっきよりも低かった。長いあいだ水に磨かれた石のように、角はない。

それでも、確かな重みがある。「菓子を、もう少し選んでくれ」一度止まり。素朴な菓子へ目を向ける。二秒ほど。「彼女が好きなら、少し多めに持って帰ってやって」その言葉を口にしたとき。


自分でも気づかないうちに、声の中から何かがほんの少し、無防備に零れた。憐れみではない。同情でもない。もっと近い。けれど、自分でもまだ名前をつけられないもの。ずっと握りしめていた拳を。


ほんの少しだけ。開いたような。アディーは、その言葉にある善意を感じ取った。侍女として長く人を見てきた彼女は、真心と、そうでないものを見分けることに慣れていた。彼女は菓子をもう二つ選んだ。一つは籠へ。もう一つは、ジェフリーへ差し出す。


「お嬢様がどうしてこれを好きなのか、気にならないんですか?」

手を伸ばしたまま、彼が受け取るのを待つ。


そして、少し好奇心を含ませた声で続ける。「それに……どうして、そんなにうちのお嬢様を気にかけるんです?」「お二人は、まだそれほど親しくないでしょう?」ジェフリーは、差し出された菓子へ目を落とした。一秒。


黙る。それから、手を伸ばして受け取った。掌に乗せると、思ったより軽い。表面は少し粗い。

焼き上がったばかりの温もりが残っている。飾り気のない、素直な温かさ。親指で縁を少し擦る。すぐには食べない。ただ、持っている。


「気になる」まず、最初の問いに答えた。

口調は平静。ただ、事実を言っただけのように。それから、すぐには続けなかった。

菓子から視線を外し、市場の向こうを長く見つめる。まだ、親しくない。それは本当だった。彼女と会ったのは二度。交わした言葉を全部合わせても、便箋一枚を埋めるほどもないかもしれない。


好きな色も知らない。右利きか左利きかも知らない。

笑うと、どんな顔になるのかも知らない。

彼女の過去さえ、今こうして他人の口から聞いている。でも。

ペーパーナイフを握った手が、震えていなかったことは知っている。


衛兵の前へ立ったときの背中も知っている。背中に傷があることも。一晩中眠っていなかったことも。あの書斎へ向かうとき、どんな歩調で歩いていたのかさえ。実際に聞いたわけでもないのに。


心の中で。何度も。何度も。描いた。


あまりにも鮮明に。なぜそこまで鮮明なのか、自分でも説明できないほど。ジェフリーは菓子を口へ運び、一口齧った。甘い。穀物の、素朴な香り。王宮の宴で出されるような洗練された甘さではない。


もっと地に足のついた。普通の。誰かから大切に扱われた午後を思わせるような甘さ。二度ほど噛む。飲み込む。それから、ようやく言った。


「俺にも分からない」それは、本当だった。きれいに整った答えなんて持っていない。横を向き、アディーを見る。琥珀色の瞳には。静かで。けれど、説明しにくい真剣さ。「ただ……」一度。止まる。「一度、誰かがあの塔に立っているのを見てしまったら」


「見なかったことには、しにくい」残った半分の菓子を、指先で軽く持ち直す。顔を伏せる。そのまま最後まで食べた。表情は平静。答えはこれで終わり。これ以上、説明するつもりはない。


そんな顔だった。アディーには、その言葉がまるで物語の一場面のように聞こえた。でも。


物語に書かれることだって、もとは現実のどこかで起きたことなのかもしれない。「私、あなた……うちのお嬢様に恋をしたんじゃないかと思います」アディーは平静に言った。


侍女としての直感。

そして、ある意味では『母親』としての直感で。ジェフリーが固まった。


今度は前よりも長かった。本人にさえ分かるほど。顔を伏せたまま。掌に残った菓子の欠片を見る。すぐには動かない。


何も言わない。市場の音は。四方から聞こえている。声を張り上げる商人。走っていった子供が何かを蹴飛ばし、乾いた音。そばの店主が笑いながら悪態をつく。全部。聞こえている。なのに。ジェフリーの周囲だけ。ぽっかり。静かになったようだった。


恋をした。その言葉を。

頭の中で。何度も。ひっくり返す。会ったのは二度。


城門の外で、一日中待った。

数日かけて、この街の路地をほとんど把握した。

彼女のペーパーナイフの柄が、どこから擦れているのか覚えている。

『ここ数日、ほとんど口をきいていない』

そう聞いたとき。胸が。ずっと重かった。今も。完全には。消えていない。親指で。掌の菓子屑を。


軽く払う。顔を上げる。市場の奥へ。光に。横顔を向ける。アディーは見ない。長い。沈黙。アディーがもう。答える気はないのだろう。そう思い始めるほど。「……何とも言えない」ようやく。口を開いた。声は。いつもより少し掠れている。


張りすぎた弦のように。音が。少しだけ。普段と違う。でも。本物。焦げ茶色の髪の後ろ。耳の付け根が。ほんの少し。赤くなっている。


否定は。しなかった。ジェフリーの耳が赤くなったのを見て、アディーは思わず笑った。

籠を持ち上げる。


もう、宮殿へ戻る頃だった。「じゃあ、お嬢様には、誰かがお嬢様に恋をしたって伝えておきますね」からかうように言った。けれど。本当に。そうするつもりだった。それが。Annaにもう少しだけ。生き続ける理由を与えるかもしれない。そう思ったから。


「今日は本当にありがとうございました。それから……あの日、すぐ塔の上へ行ってくださったことも」アディーは少し。目を伏せた。もし。あの日。悲劇になっていたら。一瞬。その可能性が。瞳を曇らせる。でも。すぐに。光が戻る。今はまだ。すべて。悪い方向へは進んでいない。「そろそろ戻ります。お嬢様をあまり長く待たせたくないので」


『お嬢様には、誰かがお嬢様に恋をしたって伝えておきますね』その一言を聞いた瞬間。ジェフリーの表情は。半秒ほど。保たれた。そのあと。ひどくゆっくり。ひびが入った。笑ったわけではない。少なくとも。


完全な笑みではない。図星を突かれ。否定しようとして。

でも。否定できる理由が。一つも見つからない。だから。その言葉が。胸の中を。熱く通り過ぎるのを。ただ。受けるしかない。そんな顔。困惑。少し。どうしていいのか。分からない。本人すら。予想していなかったほど。


「君……」口を開く。そこで。止まる。続きの言葉が。舌先を。一周。して。それでも。適切な形を。見つけられない。唇を結ぶ。顔を。少し横へ。さっき。ようやく。拾い戻した。落ち着いた表情を。もう一度。被る。ただ。耳の付け根の赤みだけは。消えない。「行ってくれ……」声は。小さい。でも。安定している。


アディーが。背を向ける。その瞬間。


ジェフリーが。半歩。前へ。進む。止めはしない。ただ。声をかける。低い。「アディー」彼女が。振り返る。ジェフリーは。少し。黙る。最後まで。言うべきか。言わないべきか。掌の上で。一度。


重さを測るように。「その話……」真剣と。諦めの悪い困惑の。ちょうど。中間みたいな声。「言うかどうかは、君に任せる」


でも。目が。全部。裏切っていた。琥珀色の瞳が。その言葉を口にしながら。宮殿の高い城壁へ。一瞬だけ。向く。ほんの。一瞬。でも。はっきり。彼は。


『言うな』とは。言わなかった。

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Ioanna And Jeffery

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